2023年12月6日水曜日

多種多様な生糸の生産

 碓氷製糸株式会社では、実需者のニーズに応じ、多種多様な生糸を生産しています。

【繰糸機】碓氷製糸には、自動繰糸機、ネットロウシルク繰糸機、太繊度低張力繰糸機、シルクトウ繰糸機が導入され、機械の特徴をいかした生糸を生産しています。

【繊 度】14中、21中、27中、32中、55中の繊度の生糸が一般的ですが、ご注文に応じ、8中、200中の生糸も生産しています。

【蚕品種】春嶺鐘月、錦秋鐘和などの一般蚕品種の外、特徴ある群馬オリジナル蚕品種(ぐんま200,ぐんま細、新小石丸、ぐんま黄金)や原種の小石丸の生糸も生産しています。また、プラチナボーイや麗明などの特殊な蚕品種も受託加工しています。

【繭の処理】農家が生産し、製糸工場に運ばれた繭は、大部分が熱風乾燥され、貯繭庫にて保管されます。しかし、光沢や伸度を損なうおそれもあることから、生挽き生糸の需要が増えつつあります。また、塩蔵処理による繰糸も行っています。

これらの組み合わせにより、碓氷製糸では50種類以上の生糸を生産しています。

日産の自動繰糸機

ネットロウシルク繰糸機

太繊度低張力繰糸機

索緒器を使った細いキビソの製造

揚返し機を活用したシルクトウの製造










2023年10月4日水曜日

生挽き生糸の特徴について

  先日、碓氷製糸のお客さんから、生挽き生糸の特徴や生挽き生糸を使って作られた織物の特徴について教えてくださいとのご連絡をいただきました。

生挽き生糸の特徴については次のとおりです。                 ①通常養蚕農家から製糸工場に運ばれた生繭は、自動繰糸機に適応した効率的な繰糸及び長期保存による変質防止のため、最高温度120度前後の熱風で乾燥されます。  ②しかし、乾燥処理により生糸の光沢や伸度を損なう恐れもありますが、生挽きでは乾燥処理を行わないため、光沢、伸度も良いと言われています。

群馬県の蚕糸研究機関で、生挽き生糸の特徴についての研究成果が発表されていますので、紹介したいと思います。                        ①生繭を乾燥繭と同じく高温軽浸透で煮繭すると、糸故障が非常に多くなり、繰糸作業を停滞させ、生糸品質の悪化に結びつきます。                      ②そこで、低温重浸透もしくはそれに近い条件で煮繭した場合、次のような結果を得ることができました。                                 ③生挽きの糸故障発生は、乾繭に比較し1.4倍~1.7倍に抑えることができました。    ④生挽き繰糸は解じょが良いとされていますが、煮繭・繰糸で加熱を抑えたため、乾繭と同程度の解じょ率となりました。                            ⑤節の成績点は、乾繭使用より若干劣りました。                     ⑥生糸は深みのある純白色で、光沢を持つ仕上がりとなりました。

生挽き生糸についての織物業者の所見については次のとおりです。        ①生挽き生糸は白く、整形、織り、染色のいずれの工程でも取り扱いしやすかった。   ②染めムラが出にくく、色は明瞭であるため、無地織物ならば染色性の良さがわかると思う。                                                               <物理的特性としては>                               ③白生地では黄味が少なく白度が高かったため、生挽き生糸と乾繭生糸との色差があらわれた。                                           ④光沢においては、測定値としての差異は認められなかった。           ⑤生挽きは、圧縮における回復性が大きかった。                   ⑥白生地の表面特性のうち、摩擦係数と表面突起の変動が小さく、布面が滑らかであった。

このような試験結果が報告されていますので、染め方や織物の種類に応じて、生糸を使い分けていただければと思います。

碓氷製糸では、冷凍庫を設置し、生繭を冷凍保管して、お客さまの要望に応じ、生挽き生糸を生産しています。碓氷製糸に設置されている冷凍庫は下の写真のとおりです。また、参考までに繭の乾燥についても、動画を掲載します。


生繭を一時保管する冷凍庫


2023年7月28日金曜日

赤城の座繰り糸 Part3

「赤城の座繰り糸」の繰糸について、ビデオで紹介していきたいと思います。(なお、このビデオは2011年に撮影したものです)

(1)原料繭について                             原料繭は繭糸商が供給しています。繭糸商は座繰り糸の品質及び繰糸者の力量に応じて繭のブレンド割合を変えています。ビデオで繰糸している糸の原料は、上繭50%、玉繭20%、中繭30%でした。

(2)煮繭について                              鍋煮繭です。1回の煮繭量は400g、煮繭時間はおよそ30分でした。

(3)繰糸について                              繰糸器は上州座繰り器です。繰糸中のお湯の温度は75℃~80℃で、糸口が出ないときは高めの温度で繰糸しています。400gの繭の繰糸時間はおよそ1時間で、生糸量歩合は48%でした。

(4)その他                                 1日当たりの繰糸回数は3回、繰糸量は500g~600gですが、若いときは1日5回で1000gくらい挽いたとのことです。

ビデオを撮影した2011年頃、「赤城の座繰り糸」を挽くおばあちゃんは10名以上いました。4名の方の繰糸を見せていただきましたが、煮繭、繰糸、揚げ返しなどそれぞれ特徴があり、節糸が得意なおばあちゃん、節が少なくきれいな糸が得意なおばあちゃん、「赤城の黒糸」が得意なおばあちゃんなど、個性的な糸を作っていました。        繭糸商のご尽力により「赤城の座繰り糸」の基本技術は若い後継者に引き継がれ、今も「赤城の座繰り糸」は生産され続けています。

2023年7月17日月曜日

赤城の座繰り糸 Part2

「糸は黒いが味は良い」と言われる赤城の座繰り糸は、空気を含み、弾力ある生糸と言われています。                              今回のブログでは、各種生糸の断面写真を見ながら、その理由について紹介していきたいと思います。                                          なお、生糸の断面写真については、岡谷蚕糸博物館の高林博士に撮影していただきました。

 (1)赤城の座繰り糸                              赤城の座繰り糸の原料は上繭、玉繭、外部汚染繭、内部汚染繭などで、鐵鍋で繭を煮て上州座繰り器で繰糸しています。                         赤城の座繰り糸の断面写真を見るとたくさんの空気層が存在します。空気層ができるのは、繭の種類の違いにより繭糸の張力が異なること、上州座繰り器は手回しのため、繰糸速度の変化によるものと思われます。この空気層により、嵩高や弾力が生まれます。



(2)上繭を使った座繰り糸                          一部の工房や作家さん達は、座繰り器を使って細い生糸から太い生糸まで、とてもきれいな生糸を挽いています。使用する原料繭は上繭が多いと思います。             上繭を原料とした座繰り糸の断面写真を見ると、赤城の座繰り糸に比べ空気層が少ないことがわかります。これは、解じょが良く、繰糸張力が一定なため、空気層が出来にくいものと思われます。                                    座繰り糸は毛羽立ちやすいため、軽く撚りを掛けたり、カバーリングが行われていますが、カバーリングした生糸の断面写真については下段のとおりです。


(3)自動繰糸機で繰糸した生糸                        碓氷製糸では上繭を原料にして14中~110中くらいまでの多種類の生糸を製造しています。生糸製造に当たっては、繊度ムラ少なく、節が少ないこと。座繰り生糸とは異なり抱合の良い生糸が求められます。                            上繭を原料に自動繰糸機で繰糸した生糸の断面写真を見ると、空気層はほとんどなく、繭糸と繭糸が密着しています。空気層が入るようだと「抱合の悪い生糸」として機屋さんからクレームが来ます。                            また1個の繭からは1300m位の糸がとれますが、最初と最後では繭糸の太さが異なります。この写真から繭糸の太さの違いがおわかりいただけると思います。


(4)太繊度低張力糸                             太繊度低張力糸は、低張力繰糸により繭糸のちぢれが残り、嵩高、伸縮性が高く、繭糸を絡み合わせることにより糸の強さが増し、セリシンが持つ吸湿、保湿の機能を活かした生糸です。                                 太繊度低張力糸の繊度は、500中~1200中くらいで、上繭+選除繭を原料として繰糸しています。                                 生糸の断面図を見ると、この生糸には多くの空気層があり、嵩高、伸縮性の高い生糸であることがわかります。そのため、使い方によっては、毛羽立ちが多くなります。  また、扁平糸であることから、独特の光沢を発しています。




2023年7月13日木曜日

赤城の座繰り糸

 群馬県は昔から養蚕が盛んで、赤城山の広い裾野及び周辺地域には緑豊かな桑畑と多くの養蚕農家があり、とれた繭を鉄鍋で煮て上州座繰り器で糸を挽きだし、伊勢崎や桐生の織物の原料として供給してきました。

この糸は、玉繭や中繭(外部汚染繭、内部汚染繭、出殻繭など)を原料に挽いており、赤城の節糸、赤城のぼろ糸、赤城の黒糸などと揶揄されてきましたが、空気を含み、弾力があり、軽いこの座繰り糸は、「糸は黒いが味が良い」などといわれ、染織作家を中心に高い評価を得ています。

かつては数千人の挽き手がいたと言われていますが、現在は繭糸商の石田さんが養成した若い挽き手のみとなってしまいました。

赤城の座繰り生糸が、国や県から補助金をもらうこともなく、奇跡的に残っているのは、この地域が養蚕が盛んだったことと、座繰り糸を専門に扱う繭糸商の存在が大きいと思います。

繭糸商は、目的とする赤城の座繰り生糸を作るため、挽き手の技術に応じたブレンド繭をおばあちゃん達に預け、糸にしてもらい、加工賃を支払い(いわゆる賃挽き)、産地や作家に販売してきました。

ほそぼそと引き継がれてきた赤城の座繰り製糸の技について、これから数回にわたって紹介していきたいと思います。








2023年6月25日日曜日

繭の保管方法と生糸品質

 一般的に、生繭を乾燥する目的は、殺蛹及び生繭の水分を取り除いてカビの発生を抑え、常温でも長期の貯蔵に耐えられるようにすることです。また、繭乾燥の過程で、繭糸に適度の熱変成をおこさせ、繰糸用の繭として好ましい性質を付与することです。

熱風乾燥の方法としては、乾燥初期の温度を110℃~120℃とし、徐々に降温させ、5~6時間後には60℃とする変温乾燥を行っています。

繭の乾燥が進みすぎると、セリシンの熱水溶性が低下して解じょが悪くなるなど繭質を損ないます。乾燥が不十分だと貯蔵中にカビが発生することがあります。一般的な乾燥歩合は40%~44%くらいです。

近年、生繭を繰糸した生糸(熱変成のない生糸)は、生糸の節は若干多いものの白度や光沢・風合いがよいとの評価もあり、生挽き生糸の需要が増えています。碓氷製糸では実需に対応すべく令和4年度に大型冷凍庫を導入しました。これにより、皆様方からの生挽き生糸需要に確実に対応出来るようになりました。

また、塩蔵(えんぞう)は古代中国で行われていた繭の保存方法と言われています。日本における塩蔵の記録は見つかっていないそうです。

塩蔵の方法は、大きな樽(バケツ)に布を挟みながら塩と繭を交互に重ねて塩漬けにします。その上に粘土でフタをします。7日~10日後に繭を取りだし風乾します。塩蔵繭は熱処理されていないので、生挽き生糸の特徴+やわらかい生糸ができるとの評価があります。塩蔵生糸についても皆様方からの要望に応じて受注生産しています。

碓氷製糸株式会社では、純国産にこだわる続け、高品質かつ特徴ある生糸生産を進めています。特徴ある生糸を生産するため、①蚕品種(原種、交雑種)、②繭産地、③繭保管(乾燥繭、生繭、塩蔵繭)、④繰糸方法(自動繰糸機、ネットロウシルク繰糸機、太繊度低張力繰糸機)を組み合わせて外国ではまねのできないオリジナル生糸を生産しています。

多段バンド型乾燥機による繭乾燥

生繭保管用の大型冷凍庫

繭を塩蔵する作業



2023年6月13日火曜日

繭掻き

 「よい桑 よい繭 よい生糸」といわれるように、①繭の大きさが揃っていて ②選除繭が少なく ③解じょ(繭糸のほぐれ具合)のよい繭を原料とすることにより、高品質な生糸が生産されます。

繭の大きさを揃えるためには、蚕の経過を揃え、熟蚕が40%位の状態で上蔟する必要があります。 

解じょのよい繭を生産するためには、営繭中の上蔟室の温湿度管理が特に重要です。温度は22度~23度、湿度は60%~70%に保つよう通風換気を図ります。特に湿度が高いと解じょが悪くなるので注意が必要です。(最近の異常気象により上蔟室にエアコンを導入している農家も多くなりました)

選除繭の種類としては、玉繭、内部汚染繭、外部汚染繭、奇形繭、破風ぬけ繭、ボカ繭などがありますが、これらの繭を上繭と一緒に繰糸すると繊度ムラが出たり、節が出たりして、生糸の品質が落ちてしまいます。

選繭は、農家でも製糸工場でも行いますが、この農家では選除繭を徹底して取り除くべく、出荷までに4回の選繭を行っています。また、ライトを効率的に使うなど選繭作業にも工夫を凝らしています。

また、飼育している蚕品種は「ぐんま細」です。これは群馬県蚕糸技術センターが育成した群馬オリジナル蚕品種で、繭糸繊度2.2.デニール、繭糸長1500mで、繊度ムラや節の少ない生糸を作るには最適な蚕品種です。繭掻き作業後の繭調査結果は、500g粒数288粒で蚕品種固有の大きさとなっており、一粒振りによる選除繭(死にごもり)も2粒と好結果でした。6A格生糸を作るのにふさわしい原料繭と思います。

選除繭の種類については次のとおりです。

繭掻きの様子については、動画でご覧下さい。

2023年6月9日金曜日

お蚕の繭つくり

 お蚕は、蛹になる過程で繭を作ります。蚕が作る繭の色は、桑の葉の色素を取り込んだ場合には黄色やオレンジ色に、桑の葉の色素を取り込まない場合には白い繭となります。一本の繭糸の太さは約3デニール(人間の髪の毛の約1/10)で、1個の繭からは1,500mもの長さの糸をとることができます。繭の大きさ、繭糸の長さ、繭糸の太さは蚕品種により異なります。詳細については、2021年10月26日ブログを覧下さい。アドレスは次のとおりです。https://gunmasilk2005.blogspot.com/2021/10/blog-post.html

この繭糸のもととなる液状絹は、お蚕の体内にある絹糸腺で作られます。絹糸腺は前部糸腺、中部糸腺、後部糸腺に分かれており、後部糸腺で分泌されたフィブロインが中部糸腺に送られ、その周囲にセリシンが分泌され、前部糸腺を通って吐糸管からでて繭糸となります。

熟蚕は、最初の引っかかり場所を見つけるとそこを接着点とし、それから頭胸部を左右に動かしながら吐糸を続け繭を作り上げていきます。

吐糸の様子については下記の動画からご覧下さい。

2023年6月3日土曜日

春蚕の上蔟

 5月8日に掃立てた10万頭の「ぐんま細」と「ぐんま黄金」が、掃立から27日目の6月3日(土)に上蔟となりました。5令の食桑日数は7日と1桑です。

5,6年前に新規参入した若い養蚕農家ですが、多くの仲間と連携を図りつつ、積極的な桑園造成及び養蚕室や上蔟室の効率的な利用と各種の作業改善により年間繭生産量800kgを達成しています。

今回の春蚕も蚕の経過は非常に良く揃っており、熟蚕が約4割時点での上蔟となりました。適期上蔟で、病蚕もいないので、大きさの揃った優良繭が期待されます。

この養蚕農家の上蔟方法については次のとおりです。 ①上蔟前日の朝に上蔟ネットをかけ3回給桑を行う ②上蔟当日の朝、ネット上の条桑を取りのぞき蚕だけにする ③ネット上の蚕をコンテナに集める ④上蔟室に搬送する ⑤1回転蔟当たり5kg(1200頭)の蚕を計量する ⑥回転蔟に振り込む ⑦2~3時間後に回転蔟を吊す

「よい桑 よい繭 良い生糸」と言われるように、良い生糸を作るためには、蚕品種の特性を備え、大きさの揃った繭を生産する必要があります。そのためには、①病蚕が発生しないよう蚕室・蚕具の消毒を徹底する ②栄養価の高い桑を十分に与える ③蚕の経過を揃える ④熟蚕が3~5割発生した段階で上蔟する ⑤解じょのよい繭を生産するため、上蔟後は痛風換気を図る ⑥出荷前にていねいに選繭する(外部汚染繭、内部汚染繭、玉繭、穴あき繭などを取り除く) などを徹底する必要があります。

上蔟作業の動画は下記のとおりです。


2023年6月1日木曜日

5令盛食期

 5月26日に5令餉食の蚕は、本日(6月1日)5令7日目の盛食期となりました。大量の桑の収穫と給桑作業など養蚕農家は猫の手も借りたいほどの忙しさです。

「ぐんま細」を飼育しているA農家では、経過と大きさの揃った繭を生産するために、広めの蚕座面積で飼育し、20時間/日程度桑が食べられるよう4回給桑+補給を行っています。

蚕の飼育では細かな気遣いが繭品質に影響します。飼育温度が20℃以下にならないよう温度管理を行い、飼育密度が同じになるよう蚕を移動させたり、給桑ムラが無いよう補給したり、「壮蚕は風で飼え」を実践するため、ドア・窓の開閉や送風機の利用などにより気流を調整します。

5令盛食期の作業を簡単に紹介すると次のようになります。①AM5時給桑(朝桑)②AM7時 採桑(収穫量500kg) ③AM11給桑(昼桑) ④PM2採桑(収穫量400kg) ⑤PM5給桑(夕桑) ⑥PM10(夜桑) ※給桑のたびに蚕や桑のムラなおしを行います。

養蚕農家が寝る間も惜しんで生産した大切な繭。碓氷製糸株式会社では最高の技術と細心の注意をもって高品質生糸作りに努力しています。 

5令盛食期の採桑作業、給桑作業については、下記より動画をご覧下さい。


2023年5月20日土曜日

春蚕の配蚕

 令和5年5月18日 3令3日目の蚕が稚蚕共同飼育所から養蚕農家へ配蚕になりました。8品種の蚕を飼育しましたが、経過の良く揃っている蚕が配蚕となりました。

配蚕の手順については次のとおりです。 ①コンテナに入る大きさに蚕座面積を調整する。 ②蚕を傷つけないよう蚕座紙を折りたたんで、コンテナに入れる。③温度調整のできる自動車で搬送する。 輸送の限界時間については、3~4時間程度とされており、それ以上遠方に搬送する場合には、輸送試験が必要です。

配蚕された蚕の取り扱いについては次のとおりです。①25度くらいの温度に調整された飼育室に蚕を運び込む。②飼育密度を低くするため、2枚の蚕箔に分泊する(1枚の蚕箔で7,500頭飼育)。③蚕と人工飼料を分けるため、糸網を掛ける(人工飼料を早期に取り除くため)。④初めて与える桑なので、少し柔らかめの桑を大きめに刻んで与える。

群馬県が監修している飼育標準表には、温度、湿度、蚕座面積、給餌量(給桑量)、作業時間、作業内容などが事細かに記載されていますが、蚕の飼育技術は、蚕の経過を揃えるための技術と言っても過言ではないと思います。蚕の経過が揃っているということは ①飼育・上蔟作業が省力化される ②大きさの揃っている繭を生産することができる ③繭の大きさが同じなので、繭糸繊度のバラツキも少なく、高品質な生糸が生産出来る ということになります。

蚕の経過を揃える最大のポイントは、各令の餉食(桑付け)のタイミングです。
桑付けが早すぎれば経過が不揃いになるし、遅すぎれば体力が消耗します。稚蚕共同飼育所では、蚕の経過を丁寧に観察し、食欲のでた起蚕が98%位の状態で各令の餉食作業を行っています。

稚蚕共同飼育所での餉食作業及び配蚕と農家での取り扱いについては、動画でご覧下さい。

2023年5月8日月曜日

令和5年春蚕の掃立が行われました


 令和5年5月8日(日)群馬県内の大規模飼育所で春蚕の掃立が行われました。

掃立られた蚕品種は、群馬オリジナル蚕品種の「ぐんま細」、「ぐんま200」、「新小石丸」、「ぐんま黄金」。蚕糸科学技術研究所が育成した「プラチナボーイ」、「おりひめ」。一般蚕品種の春嶺×鐘月(カネボウが育成)、小石丸(原種)の8品種です。

掃立数量は約160箱(1箱:30,000頭)で、栃木県、茨城県、埼玉県からの委託飼育も行っています。

飼料は、群馬県が開発・製造している「くわのはな」という人工飼料を使っています。人工飼料を使うメリットとしては、①稚蚕飼育作業の手間が桑育に比べ1/10ですむこと ②細菌やウイルスが飼育室に持ち込まれないため、蚕が病気にかかりづらいこと ③除沙を行わないため遺失蚕が少ないこと ④蚕の経過がとても良く揃うことなどです。

掃立作業の手順としては、①催青台紙と覆紙を並べます ②1枚の台紙には15,000頭の蚕が入っているので、約400gの人工飼料を与えます ③蚕座周辺の人工飼料を掃き込み、蚕座を整えます ④飼料をもらった蚕は、30度 90%に調整された飼育室で暗飼育されます。

稚蚕共同飼育所では1~3令の飼育が行われ、5月18日(木)に農家に配蚕されます。

掃立の状況については、動画でご覧下さい。