2022年1月13日木曜日

遺伝子組換えカイコについて(3)

 【遺伝子組換えカイコの作り方】                          遺伝子組換えとは、その生物(蚕)が持っていない外来遺伝子を組み込むことです。そのメリットは、従来の品種改良より短期間で大幅に改良出来ることです。

遺伝子組換えカイコの作成方法は、                        (1)蚕の卵に外来遺伝子のDNA溶液を注射します。                (2)孵化した幼虫を飼育し、成虫同士を交配させ卵を採ります。          (3)卵や幼虫、成虫の中から遺伝子組換えカイコを見つけます。              こうして作られた遺伝子組換え蚕は、外来遺伝子が染色体に組み込まれるため、継代により安定的に得ることができます。

【遺伝子組換えカイコで何ができるのか?】                    (1)医薬品・医療用素材の開発                           遺伝子組換えカイコが実用化されているものとしては、病気の診断等に使用される診断キットがあります。これは、診断キットに必要なタンパク質成分をセリシン層に作らせ、抽出・精製し、診断キットの製造に使われています。                    また、ヒト型コラーゲンも同様に製造され、化粧品に利用されています。                           
(2)新素材の開発                                 ①蛍光色を発する繭・生糸                             クラゲやサンゴの蛍光タンパク質を繭糸のフィブロインに作らせることで、緑色、赤色、オレンジ色などの蛍光を発する生糸です。                       ②クモ糸シルクの開発                               クモ糸の特性を付加したシルクは、従来のシルクに比べよく伸びて切れにくい性質を持っていると言われています。また、強度も通常のシルクより強くなっています。実用化を目指して研究が進んでいます。                              ③高染色性超極細シルク                              極細繊度蚕品種「はくぎん」をもちいてアミノ酸配列を改変した遺伝子組換え系統は、「はくぎん」よりさらに細く、染色性が良いため、発色が良く美しい光沢があります。


このほかにも、創傷保護材としての高機能フィブロインフィルムの研究開発や、遺伝子組換えバキュロウイルスの利用が進んでいます。