2023年6月25日日曜日

繭の保管方法と生糸品質

 一般的に、生繭を乾燥する目的は、殺蛹及び生繭の水分を取り除いてカビの発生を抑え、常温でも長期の貯蔵に耐えられるようにすることです。また、繭乾燥の過程で、繭糸に適度の熱変成をおこさせ、繰糸用の繭として好ましい性質を付与することです。

熱風乾燥の方法としては、乾燥初期の温度を110℃~120℃とし、徐々に降温させ、5~6時間後には60℃とする変温乾燥を行っています。

繭の乾燥が進みすぎると、セリシンの熱水溶性が低下して解じょが悪くなるなど繭質を損ないます。乾燥が不十分だと貯蔵中にカビが発生することがあります。一般的な乾燥歩合は40%~44%くらいです。

近年、生繭を繰糸した生糸(熱変成のない生糸)は、生糸の節は若干多いものの白度や光沢・風合いがよいとの評価もあり、生挽き生糸の需要が増えています。碓氷製糸では実需に対応すべく令和4年度に大型冷凍庫を導入しました。これにより、皆様方からの生挽き生糸需要に確実に対応出来るようになりました。

また、塩蔵(えんぞう)は古代中国で行われていた繭の保存方法と言われています。日本における塩蔵の記録は見つかっていないそうです。

塩蔵の方法は、大きな樽(バケツ)に布を挟みながら塩と繭を交互に重ねて塩漬けにします。その上に粘土でフタをします。7日~10日後に繭を取りだし風乾します。塩蔵繭は熱処理されていないので、生挽き生糸の特徴+やわらかい生糸ができるとの評価があります。塩蔵生糸についても皆様方からの要望に応じて受注生産しています。

碓氷製糸株式会社では、純国産にこだわる続け、高品質かつ特徴ある生糸生産を進めています。特徴ある生糸を生産するため、①蚕品種(原種、交雑種)、②繭産地、③繭保管(乾燥繭、生繭、塩蔵繭)、④繰糸方法(自動繰糸機、ネットロウシルク繰糸機、太繊度低張力繰糸機)を組み合わせて外国ではまねのできないオリジナル生糸を生産しています。

多段バンド型乾燥機による繭乾燥

生繭保管用の大型冷凍庫

繭を塩蔵する作業



2023年6月13日火曜日

繭掻き

 「よい桑 よい繭 よい生糸」といわれるように、①繭の大きさが揃っていて ②選除繭が少なく ③解じょ(繭糸のほぐれ具合)のよい繭を原料とすることにより、高品質な生糸が生産されます。

繭の大きさを揃えるためには、蚕の経過を揃え、熟蚕が40%位の状態で上蔟する必要があります。 

解じょのよい繭を生産するためには、営繭中の上蔟室の温湿度管理が特に重要です。温度は22度~23度、湿度は60%~70%に保つよう通風換気を図ります。特に湿度が高いと解じょが悪くなるので注意が必要です。(最近の異常気象により上蔟室にエアコンを導入している農家も多くなりました)

選除繭の種類としては、玉繭、内部汚染繭、外部汚染繭、奇形繭、破風ぬけ繭、ボカ繭などがありますが、これらの繭を上繭と一緒に繰糸すると繊度ムラが出たり、節が出たりして、生糸の品質が落ちてしまいます。

選繭は、農家でも製糸工場でも行いますが、この農家では選除繭を徹底して取り除くべく、出荷までに4回の選繭を行っています。また、ライトを効率的に使うなど選繭作業にも工夫を凝らしています。

また、飼育している蚕品種は「ぐんま細」です。これは群馬県蚕糸技術センターが育成した群馬オリジナル蚕品種で、繭糸繊度2.2.デニール、繭糸長1500mで、繊度ムラや節の少ない生糸を作るには最適な蚕品種です。繭掻き作業後の繭調査結果は、500g粒数288粒で蚕品種固有の大きさとなっており、一粒振りによる選除繭(死にごもり)も2粒と好結果でした。6A格生糸を作るのにふさわしい原料繭と思います。

選除繭の種類については次のとおりです。

繭掻きの様子については、動画でご覧下さい。

2023年6月9日金曜日

お蚕の繭つくり

 お蚕は、蛹になる過程で繭を作ります。蚕が作る繭の色は、桑の葉の色素を取り込んだ場合には黄色やオレンジ色に、桑の葉の色素を取り込まない場合には白い繭となります。一本の繭糸の太さは約3デニール(人間の髪の毛の約1/10)で、1個の繭からは1,500mもの長さの糸をとることができます。繭の大きさ、繭糸の長さ、繭糸の太さは蚕品種により異なります。詳細については、2021年10月26日ブログを覧下さい。アドレスは次のとおりです。https://gunmasilk2005.blogspot.com/2021/10/blog-post.html

この繭糸のもととなる液状絹は、お蚕の体内にある絹糸腺で作られます。絹糸腺は前部糸腺、中部糸腺、後部糸腺に分かれており、後部糸腺で分泌されたフィブロインが中部糸腺に送られ、その周囲にセリシンが分泌され、前部糸腺を通って吐糸管からでて繭糸となります。

熟蚕は、最初の引っかかり場所を見つけるとそこを接着点とし、それから頭胸部を左右に動かしながら吐糸を続け繭を作り上げていきます。

吐糸の様子については下記の動画からご覧下さい。

2023年6月3日土曜日

春蚕の上蔟

 5月8日に掃立てた10万頭の「ぐんま細」と「ぐんま黄金」が、掃立から27日目の6月3日(土)に上蔟となりました。5令の食桑日数は7日と1桑です。

5,6年前に新規参入した若い養蚕農家ですが、多くの仲間と連携を図りつつ、積極的な桑園造成及び養蚕室や上蔟室の効率的な利用と各種の作業改善により年間繭生産量800kgを達成しています。

今回の春蚕も蚕の経過は非常に良く揃っており、熟蚕が約4割時点での上蔟となりました。適期上蔟で、病蚕もいないので、大きさの揃った優良繭が期待されます。

この養蚕農家の上蔟方法については次のとおりです。 ①上蔟前日の朝に上蔟ネットをかけ3回給桑を行う ②上蔟当日の朝、ネット上の条桑を取りのぞき蚕だけにする ③ネット上の蚕をコンテナに集める ④上蔟室に搬送する ⑤1回転蔟当たり5kg(1200頭)の蚕を計量する ⑥回転蔟に振り込む ⑦2~3時間後に回転蔟を吊す

「よい桑 よい繭 良い生糸」と言われるように、良い生糸を作るためには、蚕品種の特性を備え、大きさの揃った繭を生産する必要があります。そのためには、①病蚕が発生しないよう蚕室・蚕具の消毒を徹底する ②栄養価の高い桑を十分に与える ③蚕の経過を揃える ④熟蚕が3~5割発生した段階で上蔟する ⑤解じょのよい繭を生産するため、上蔟後は痛風換気を図る ⑥出荷前にていねいに選繭する(外部汚染繭、内部汚染繭、玉繭、穴あき繭などを取り除く) などを徹底する必要があります。

上蔟作業の動画は下記のとおりです。


2023年6月1日木曜日

5令盛食期

 5月26日に5令餉食の蚕は、本日(6月1日)5令7日目の盛食期となりました。大量の桑の収穫と給桑作業など養蚕農家は猫の手も借りたいほどの忙しさです。

「ぐんま細」を飼育しているA農家では、経過と大きさの揃った繭を生産するために、広めの蚕座面積で飼育し、20時間/日程度桑が食べられるよう4回給桑+補給を行っています。

蚕の飼育では細かな気遣いが繭品質に影響します。飼育温度が20℃以下にならないよう温度管理を行い、飼育密度が同じになるよう蚕を移動させたり、給桑ムラが無いよう補給したり、「壮蚕は風で飼え」を実践するため、ドア・窓の開閉や送風機の利用などにより気流を調整します。

5令盛食期の作業を簡単に紹介すると次のようになります。①AM5時給桑(朝桑)②AM7時 採桑(収穫量500kg) ③AM11給桑(昼桑) ④PM2採桑(収穫量400kg) ⑤PM5給桑(夕桑) ⑥PM10(夜桑) ※給桑のたびに蚕や桑のムラなおしを行います。

養蚕農家が寝る間も惜しんで生産した大切な繭。碓氷製糸株式会社では最高の技術と細心の注意をもって高品質生糸作りに努力しています。 

5令盛食期の採桑作業、給桑作業については、下記より動画をご覧下さい。