2023年10月4日水曜日

生挽き生糸の特徴について

  先日、碓氷製糸のお客さんから、生挽き生糸の特徴や生挽き生糸を使って作られた織物の特徴について教えてくださいとのご連絡をいただきました。

生挽き生糸の特徴については次のとおりです。                 ①通常養蚕農家から製糸工場に運ばれた生繭は、自動繰糸機に適応した効率的な繰糸及び長期保存による変質防止のため、最高温度120度前後の熱風で乾燥されます。  ②しかし、乾燥処理により生糸の光沢や伸度を損なう恐れもありますが、生挽きでは乾燥処理を行わないため、光沢、伸度も良いと言われています。

群馬県の蚕糸研究機関で、生挽き生糸の特徴についての研究成果が発表されていますので、紹介したいと思います。                        ①生繭を乾燥繭と同じく高温軽浸透で煮繭すると、糸故障が非常に多くなり、繰糸作業を停滞させ、生糸品質の悪化に結びつきます。                      ②そこで、低温重浸透もしくはそれに近い条件で煮繭した場合、次のような結果を得ることができました。                                 ③生挽きの糸故障発生は、乾繭に比較し1.4倍~1.7倍に抑えることができました。    ④生挽き繰糸は解じょが良いとされていますが、煮繭・繰糸で加熱を抑えたため、乾繭と同程度の解じょ率となりました。                            ⑤節の成績点は、乾繭使用より若干劣りました。                     ⑥生糸は深みのある純白色で、光沢を持つ仕上がりとなりました。

生挽き生糸についての織物業者の所見については次のとおりです。        ①生挽き生糸は白く、整形、織り、染色のいずれの工程でも取り扱いしやすかった。   ②染めムラが出にくく、色は明瞭であるため、無地織物ならば染色性の良さがわかると思う。                                                               <物理的特性としては>                               ③白生地では黄味が少なく白度が高かったため、生挽き生糸と乾繭生糸との色差があらわれた。                                           ④光沢においては、測定値としての差異は認められなかった。           ⑤生挽きは、圧縮における回復性が大きかった。                   ⑥白生地の表面特性のうち、摩擦係数と表面突起の変動が小さく、布面が滑らかであった。

このような試験結果が報告されていますので、染め方や織物の種類に応じて、生糸を使い分けていただければと思います。

碓氷製糸では、冷凍庫を設置し、生繭を冷凍保管して、お客さまの要望に応じ、生挽き生糸を生産しています。碓氷製糸に設置されている冷凍庫は下の写真のとおりです。また、参考までに繭の乾燥についても、動画を掲載します。


生繭を一時保管する冷凍庫