2021年8月21日土曜日

お蚕さまの品種(11)蚕太(さんた)

  平成5年頃よりニット製造業者がシルクを使ったニット製品の開発を始めましたが、普通蚕品種から生産された生糸にはシャリ感がなく、太繊度蚕品種「ありあけ」は既存の回転蔟が使えないなどの欠点があり、普及しませんでした。

 このような状況下、群馬県蚕糸技術センターでは、繭糸繊度4デニール以上を目標とし、回転蔟にも適応出来るよう繭をあまり大きくしないことを考慮し、日本種4系統、中国種3系統により育成を始めました。各種の組み合わせの結果、化蛹歩合、繭の揃い、繭の大きさ等を併せて検討した結果、平成12年に日日交雑のFGN1×N510の組み合わせが選定されました。

 育成された太繊度蚕品種の性状は、飼育日数は全令で約2日長く、化蛹歩合は若干低くなるが、収繭量に大差はありません。生糸量歩合は低く、繭糸長は短いのですが、繭糸繊度は5デニールと太く、太繊度蚕品種の特徴を示しました。幼虫の斑紋は限性形質を示し、メスは形蚕、オスは姫蚕となる。繭は浅縊れ俵型で、ちぢらは普通、大きさは普通蚕品種よりやや小さいので、従来の回転蔟が利用出来ます。

 このように育成された太繊度蚕品種は「蚕太」と命名され、平成13年より農家飼育が始まりました。生産された生糸はシルクニット業者に供給され、生糸特有の光沢をもち、柞蚕糸なみのシャリ感あるシルクニット製品が開発されました。

 しかし、「蚕太」を飼育する農家からは、①日日交雑なので、チョット病気に弱く、飼育しづらい。②飼育日数が長い。③上蔟時、蚕が網の上に上がらず、上蔟の手間がかかりすぎる。などの理由から、平成22年農家での飼育は終了しました。





繭の解じょについて

 初秋蚕の繭出荷が最盛期です。令和3年の初秋蚕の掃立は7月18日、上蔟は8月11日前後、繭出荷が8月20日前後となっています。

 令和3年初秋蚕期に群馬県で飼育されている蚕品種は、夏の暑さに抵抗力のある「なつこ」です。出荷された繭の調査結果は、500g粒数が270粒~280粒(単繭重で1.8g前後)、死にごもりも平年に比べて少なく結繭歩合も80%以上で近年にない好成績です。

 繭の解じょは、上蔟してから吐糸終了までの温度、湿度、気流に大きく左右されます。その関係については、「吐糸営繭中の微気象と解じょ率」のとおりです。選除繭も少なかった群馬オリジナル蚕品種「なつこ」、繭の品質評価はこれからですが、解じょ率についても良い成績が期待されます。

 製糸工場が繭を購入する場合最も重要視するのは、玉繭、内部汚染繭、極小繭などの選除繭が少ないことと、解じょ(繭糸のほぐれ具合)が良いことです。

 繭の解じょとは、繭からの糸のほぐれ具合のことをいいます。解じょは、繰糸効率や生糸量歩合に密接な関係を持っているだけでなくなく、生糸の品質にも大きな影響を与えます。解じょ率の求め方は、一定粒数の繭の繰糸を行い、その繭が終わるまでに接緒した回数(繰られている生糸に糸口の出ている繭を継ぎ足した回数。途中で1回糸が切れた場合は再度糸口を求めて接緒することになるのでこの繭の接緒回数は2回と数えられる)を数えて次の式で計算されます。 解じょ率=(繰糸粒数/接緒回数)×100(%)

 


 




 

2021年8月3日火曜日

収繭、毛羽取りは上蔟から何日目?

 繭出荷に際し、上蔟後いつ頃から収繭、毛羽取り作業を始めたらよいか悩むところです。収繭、毛羽取り作業が早すぎると、未化蛹だったり黄色蛹が多いため、衝撃によって皮膚が破れ出血し、内部汚染繭となってしまいます。収繭作業が遅すぎると、経過の早い蛹は蛾になり、繭に穴をあけてしまします。

 では、収繭、毛羽取り作業は、上蔟後何日目くらいが適期なのか検討してみましょう。蚕は変温動物なので、温度により吐糸時間や化蛹に要する時間が異なります。上蔟室が22℃の場合、蚕が吐糸終了まで約4日、蛹が硬化するまでに約6日かかります。上蔟室が 26℃の場合、吐糸終了まで3.5日、蛹が硬化するまでに約5日かかります。つまり、上蔟室が26℃の場合、上蔟日を含めて7日目以降に収繭、毛羽取り作業を行うことになります。

 このように、収繭、毛羽取り作業は、上蔟室の温度や蚕の揃いにより異なりますので、繭を切開して蛹が硬化しているのを確認してから、作業を始めるのがよいでしょう。