「糸は黒いが味は良い」と言われる赤城の座繰り糸は、空気を含み、弾力ある生糸と言われています。 今回のブログでは、各種生糸の断面写真を見ながら、その理由について紹介していきたいと思います。 なお、生糸の断面写真については、岡谷蚕糸博物館の高林博士に撮影していただきました。
(1)赤城の座繰り糸 赤城の座繰り糸の原料は上繭、玉繭、外部汚染繭、内部汚染繭などで、鐵鍋で繭を煮て上州座繰り器で繰糸しています。 赤城の座繰り糸の断面写真を見るとたくさんの空気層が存在します。空気層ができるのは、繭の種類の違いにより繭糸の張力が異なること、上州座繰り器は手回しのため、繰糸速度の変化によるものと思われます。この空気層により、嵩高や弾力が生まれます。
(3)自動繰糸機で繰糸した生糸 碓氷製糸では上繭を原料にして14中~110中くらいまでの多種類の生糸を製造しています。生糸製造に当たっては、繊度ムラ少なく、節が少ないこと。座繰り生糸とは異なり抱合の良い生糸が求められます。 上繭を原料に自動繰糸機で繰糸した生糸の断面写真を見ると、空気層はほとんどなく、繭糸と繭糸が密着しています。空気層が入るようだと「抱合の悪い生糸」として機屋さんからクレームが来ます。 また1個の繭からは1300m位の糸がとれますが、最初と最後では繭糸の太さが異なります。この写真から繭糸の太さの違いがおわかりいただけると思います。
(4)太繊度低張力糸 太繊度低張力糸は、低張力繰糸により繭糸のちぢれが残り、嵩高、伸縮性が高く、繭糸を絡み合わせることにより糸の強さが増し、セリシンが持つ吸湿、保湿の機能を活かした生糸です。 太繊度低張力糸の繊度は、500中~1200中くらいで、上繭+選除繭を原料として繰糸しています。 生糸の断面図を見ると、この生糸には多くの空気層があり、嵩高、伸縮性の高い生糸であることがわかります。そのため、使い方によっては、毛羽立ちが多くなります。 また、扁平糸であることから、独特の光沢を発しています。
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