正倉院に保存されている「税」としての「絁」は、繭から挽きずりだした太糸で、セリシンが残っており、張力をかけずに時間をかけて糸にし、大変な手間をかけて織り上げたものと考えられています。
大日本蚕糸会蚕糸科学研究所が開発した太繊度低張力糸(ふい絹)は、カイコが吐いた繭糸の機能をそのまま身に纏うことを目標に開発された生糸です。
【太繊度低張力糸とは】 ①低張力繰糸(繰糸スピードを落とした繰糸)により、繭糸の持つちぢれを残してその特性を活かす。 ②真綿のように繭糸の絡みによる強さの機能を活かす。 ③繊度を太くすることにより、セリシンを残し、セリシンの持つ吸湿、保温の機能を活かす。このような特性から、しわや洗濯に強い「普段着」としての衣料、言い換えれば「軽くて暖かく、また柔らかで爽やかで、着るほどに体に馴染む衣料」の素材に適しています。しかし、繭からほぐれるときに出る綿状の節や、太さのムラの発生もあり(これらも繭糸の持つ本来の特徴である)、従来の生糸の規格水準からすると欠点要素も持っています。
【太繊度低張力糸の繰糸方法(フィッシングアップ方式)】 カイコの吐いた糸の形状(ちぢれ)を残すために、繭糸一本当たりの張力が0.4g以下となるように繭糸を引きだし、たるんだ部分だけを巻き取る方式。大日本蚕糸会蚕糸科学研究所で、フィッシングアップ方式を機械化し、大量生産が可能となりました。
【太繊度低張力糸の用途】 これまでの用途としては、セーター、ストール、夏帯などに使われています。
【太繊度低張力糸(丸)】 繰糸能率を向上させつつ、太繊度低張力糸の特徴をいかした生糸が「太繊度低張力糸(丸)」です。ふい絹は光沢のある扁平糸ですが、「丸」は独特の繰糸方法により生糸が丸みを帯びています。価格の安いのも大きな特徴です。 しかし、繰糸の際に出る毛羽状の綿や繊度ムラがふい絹より大きいことなど、欠点要素もあります。
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