2020年8月4日火曜日

お蚕さまの品種(5)世・紀×二・一

 世・紀×二・一(せいきにいち)は、群馬県蚕業試験場が13カ年かけて育成した日中四元交雑の二化性品種で、平成3年に中細繊度の特徴ある蚕品種として品種指定された。
【育成の背景】
 当時、和装絹織物の一層の高級化を図るため、繭糸繊度が従来の和装用より細い中細繊度で、しかも繭糸繊度偏差の少ない繭が要望されていた。育成にあたっては、一般普及品種と比較して、農家や製糸の生産性の劣らないことを目標とした。
【性 状】
 全国7カ所の試験研究機関で行われた蚕品種性状調査の結果を見ると、対照品種に比べ5令の飼育日数がやや長く、化蛹歩合は96.5%と高く、繭糸繊度は2.6デニールと細く、繭糸長は1500m以上と長かった。

【繊度曲線】

「世・紀×二・一」と一般蚕品種の繭糸繊度曲線を比較すると、「世・紀×二・一」では最外層から200m付近のピークが認められず、最内層まで穏やかな曲線を描き、細くなっている。また、「世・紀×二・一」は、最も細い最内層部の繊度は一般蚕品種と大差なく、繊度偏差は小さくなり、粒内繊度の変動係数は低くなった。

世・紀×二・一の繭と生糸
「世・紀×二・一」は、群馬県無形重要文化財保持者だった藍田正雄さんによって染色性の良さが認められた。「世・紀×二・一」の生糸には蛍光黄変色素が含まれていること、セリシン2層部には溶けにくいセリシンを含んでいることが、染色性につながっていると思われる。



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