2020年8月11日火曜日

一代雑種とは

 養蚕の発展を支えた技術革新としては、蚕当計、一代雑種、人工孵化、人工飼料、遺伝子組換え蚕などが上げられるが、繭生産に最も貢献した技術は外山亀太郎博士が1906年(明治39年)に提唱した「一代雑種」の利用だと思う。
 生物は、近親交配を続けると弱くなっていくが、遠縁の系統同士を交配すると、その子の一代だけは生育旺盛で揃いも良く多収になる。この現象をヘテロシス(雑種強勢)という。一代雑種の主な特徴は①産卵数が増える ②孵化や眠起が斉一で幼虫の経過が短くなる ③病気や不良環境にも強くなり飼育が容易 ④繭重、繭層量が多くなる ⑤繭糸繊度が太くなり繭糸長も長くなる などである。
 トウモロコシでは一代雑種の利用は知られているいるが、植物の一代雑種の第一号は1926年に埼玉県農業試験場で作出されたナスと聞いている。
 さて、養蚕農家が飼育している蚕品種は、雑種強勢を利用するために交雑種が使われており、その卵を「普通蚕種」という。この普通蚕種の製造に用いる蚕種を「原蚕種」という。
 二つの品種間の交雑で、最も強く雑種強勢が現れるのは一代雑種(単交雑)で、虫質強健で均一な繭が生産される。しかし、この単交雑の欠点は、普通蚕種を作るために飼育される蚕(原蚕)が弱く、産卵数が少ないことである。単交雑の欠点を補うために考え出されたのが四元交雑で、現在広く利用されている。
交雑形式を図示すると次のとおり。

 
 

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