2022年2月1日火曜日

緒糸(キビソ)とは

緒糸(キビソ)とは、繭から糸口を見つけるために、繭の表面からもつれた状態で引きだした糸のことです。                                   碓氷製糸では、太めの第一緒糸と細めの第二緒糸を作っています。            緒糸には40%ものセリシンが含まれており、健康タオルなどには最適な素材です。 また、魅力的な形状を持つことから、壁紙などにも使われています。

【第一緒糸】第一緒糸は、もつれた状態で引き出された繭糸を大枠に巻き取った糸です。太さは約3000デニールです。     

【第二緒糸】索緒機に形成枠を取り付け、これに繭糸を巻き付け、一本の糸を網状に集約します。この網状生糸に、さらに繭糸を絡めて(カバーリングして)、小枠に巻き取ります。第二緒糸は索緒器で作られるカバーリングされた網状生糸です。太さは約1000デニールです。

では、緒糸の製造工程を動画でご覧ください。

2022年1月13日木曜日

遺伝子組換えカイコについて(3)

 【遺伝子組換えカイコの作り方】                          遺伝子組換えとは、その生物(蚕)が持っていない外来遺伝子を組み込むことです。そのメリットは、従来の品種改良より短期間で大幅に改良出来ることです。

遺伝子組換えカイコの作成方法は、                        (1)蚕の卵に外来遺伝子のDNA溶液を注射します。                (2)孵化した幼虫を飼育し、成虫同士を交配させ卵を採ります。          (3)卵や幼虫、成虫の中から遺伝子組換えカイコを見つけます。              こうして作られた遺伝子組換え蚕は、外来遺伝子が染色体に組み込まれるため、継代により安定的に得ることができます。

【遺伝子組換えカイコで何ができるのか?】                    (1)医薬品・医療用素材の開発                           遺伝子組換えカイコが実用化されているものとしては、病気の診断等に使用される診断キットがあります。これは、診断キットに必要なタンパク質成分をセリシン層に作らせ、抽出・精製し、診断キットの製造に使われています。                    また、ヒト型コラーゲンも同様に製造され、化粧品に利用されています。                           
(2)新素材の開発                                 ①蛍光色を発する繭・生糸                             クラゲやサンゴの蛍光タンパク質を繭糸のフィブロインに作らせることで、緑色、赤色、オレンジ色などの蛍光を発する生糸です。                       ②クモ糸シルクの開発                               クモ糸の特性を付加したシルクは、従来のシルクに比べよく伸びて切れにくい性質を持っていると言われています。また、強度も通常のシルクより強くなっています。実用化を目指して研究が進んでいます。                              ③高染色性超極細シルク                              極細繊度蚕品種「はくぎん」をもちいてアミノ酸配列を改変した遺伝子組換え系統は、「はくぎん」よりさらに細く、染色性が良いため、発色が良く美しい光沢があります。


このほかにも、創傷保護材としての高機能フィブロインフィルムの研究開発や、遺伝子組換えバキュロウイルスの利用が進んでいます。

2021年12月20日月曜日

塩蔵繭から生産された生糸の特性について

1 繭の保存方法について                              碓氷製糸株式会社では、お客さまのニーズに応じて①生 ②乾燥 ③塩蔵で繭を保存し、生糸生産を行っています。今日は塩蔵の処理方法と塩蔵繭から生産された生糸の特性について報告します。

2 塩蔵処理について                                             ①用意するものは、繭、天然海水塩、100㍑のポリバケツ、ビニール袋、木綿の布、輪ゴム   または紐、泥粘土                                   ②100㍑のポリバケツの中にビニール袋を入れ、袋の底に晒木綿の布を敷きます。        ③この上に繭を乗せ、天然の海水塩を振り巻きます。                  ④布+繭+塩の順番で8層くらいに積み重ねます。                      ⑤中の空気をよく抜いて輪ゴムまたは紐で縛り、泥粘土で密閉し、窒息させ殺蛹しま  す。                                       ⑥7~10日後にポリバケツから繭を取り出し、風乾します。

3 保存状況                                        7~10日後に繭をポリバケツから出してみると、水分が繭の外へ少ししみ出てていますが、繭からの発蛾も繭の汚れもなく、振りまいた塩が湿っており、高い吸湿効果が見られました。塩蔵は密閉することで殺蛹し、塩は湿度調整のために有効です。なお塩蔵処理に当たっては塩の量により生糸品質に差が出るといわれています。

4 生糸の特性について                              ①生繭、塩蔵繭から繰製された生糸は、乾繭などに比べ極めて白度が高い。       ②小石丸の塩蔵では、解じょが良好で生糸の強力伸度が優位に出る。一般品種におい   ても解除は良い。                                 ③水蒸気処理の生糸は、強力が高くやや硬直な感触で光沢が悪い。           ④塩蔵繭から繰製された生糸は、伸度、強力、ヤング率ともに高い(下の表のとおり)。 

日本シルク学会誌第15巻より

ポリバケツに繭を入れ天然海水塩を振りかけます

塩を振りかけた後、木綿の布を繭の上に敷きます

泥粘土でフタをします
7日~9日後に取りだし、風乾します

2021年12月7日火曜日

遺伝子組換えカイコについて(2)

 遺伝子組換えカイコの2回目は、カルタヘナ法についてです。

カルタヘナ法の正式名称は、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」で、遺伝子組換え生物の安全性確保を図るための法律です。実験室など外界と隔離され、拡散防止措置が施された施設内で使用する「第二種使用等」と、屋外など外界と隔離しないところで利用する「第一種使用等」があります。


群馬県蚕糸技術センターでは、主務大臣の承認を受けた第二種使用の蚕室で「蚕種製造」や「稚蚕飼育」を行い、前橋遺伝子組換えカイコ飼育組合は、稚蚕共同飼育所を第二種仕様に改造、承認を受け、コラーゲンなどの有用タンパク質生産を行っています。 県内2戸の養蚕農家は、蚕の飼育室を第一種使用に改造、承認を受け、緑色蛍光シルクや高染色性・極細シルクの繭生産を行っています。

遺伝子組換えカイコについて(1)

 GMカイコすなわち「遺伝子組換えカイコ」とは、遺伝子の組換え技術により、カイコに他の生物の遺伝子を組み込んだカイコのことを言います。

カイコは家畜化された昆虫で、「逃げない、飛べない、人間に危害を加えない」等の特性を持っています。また、カイコは、繭糸の成分の97%はタンパク質で、約1ヶ月という短期間に大量のタンパク質を合成する力を持っています。

遺伝子組換えカイコは、平成12年当時の蚕糸・昆虫農業技術研究所で、世界で初めて作出することに成功しました。世界最高の遺伝資源や研究蓄積を持つ日本ならではの大きな研究成果です。

遺伝子組換え研究の目指すところは、日本が得意とするカイコの研究蓄積を活かし、世界に先駆けた有用物質生産や高機能シルクの研究開発により、養蚕農家の所得向上と地域の新たな産業振興や雇用創出に貢献出来る「蚕業革命」を起こすことです。

具体的な事例として、オワンクラゲの遺伝子を組み込んだ緑色蛍光シルク、高染色性極細シルク、クモの遺伝子を組み込んだくも糸シルク、再生医療用の細胞接着シルクなどがあり、緑色蛍光シルクについては平成29年から、高染色性極細シルクについては令和3年から群馬県内の養蚕農家で大量飼育が始まりました。

カイコを使った有用物質生産としては、コラーゲンなどの化粧品素材、検査薬や診断薬、さらには医薬品等の有用物質を生産する研究が進められており、その成果として平成22年度から検査役用のタンパク質生産、平成28年度からは化粧品用のコラーゲンを生産する遺伝子組換えカイコの実用飼育が稚蚕共同飼育所の施設を使って行われています。

これらの取り組みを一層推進するため、令和元年9月17日には、国レベルで「シルクビジネス協議会」が立ち上がり、用途開発について検討されています。

これから、数回にわたり「遺伝子組換えカイコ」について紹介していきます。


2021年10月27日水曜日

繭糸繊度が異なる蚕品種の繭糸及び織物特性

  蚕品種により、繭糸長や繭糸繊度が異なることは前回説明したとおりです。今回は、繭糸繊度の違いが織物にどのような影響を与えるのか、また繭糸繊度がどのような粒内繊度曲線を示すのか、紹介します。ぐんま200の繭糸繊度は約3.0デニール、蚕太の繭糸繊度は約4.5デニール、ぐんま細の繭糸繊度は約2.2デニールです。この三品種を比較してみました                                                (平成22年度群馬県蚕糸技術センターの研究成果発表会資料より)

【織物の性能評価】                                                        蚕品種別の織物の性能評価は下表のとおりです。破断点強度については、ぐんま細はぐんま200より強度物性が大きく、蚕太は小さいことが確認されました。剛軟性については、ぐんま細はぐんま200より柔らかい織物となります。防しわ率についてはほとんど差がありません。KESによる測定結果として、ぐんま細はぐんま200より曲げ柔らかいことが確認されました。

【粒内繊度曲線】                                  蚕品種別の粒内繊度曲線は、下のグラフのとおりです。蚕太は外層から200~350mの繭糸長で最も太い4.6デニールで、最後は2デニールくらいになります。ぐんま200は、外層部から100m付近で3.2デニールに、その後緩やかに細くなります。ぐんま細は、外層部から緩やかに太くなり、550m付近で2.4デニールとなり、その後緩やかに細くなっています。繊度ムラの少ない生糸を作るためには、繭糸が細く、長く、粒内繊度差が少ないことが大切です。


2021年10月26日火曜日

蚕品種別の繭糸長、繭糸繊度、小節について

  養蚕農家にとっては、繭が大きく、病気に強くて飼育しやすい蚕品種が望まれています。

 機屋さんは、繊度ムラの少ない生糸、つまり繭糸長が長く、繭糸繊度が細く、粒内繊度差の少ない繭から生産された生糸を求めています。

 群馬県蚕糸技術センターでは、県が育成したオリジナル蚕品種(8品種)+対照品種(春嶺鐘月)の性状調査を定期的に行っています。その結果については下表(春蚕期調査)のとおりです。

 9品種で、一番繭糸繊度が細いのが「ぐんま細」の2.2デニール、最も太いのが「蚕太」の4.48デニール、繭糸長の最も長いのが「世紀二一」、「ぐんま細」の1,620m、最も短いのが「蚕太」の648mです。小節点については、「世紀二一」が96点で最も高く、「蚕太」が92.5で最も低くなっています。

 生糸を扱う場合の参考ににしていただければ幸いです。



蚕品種別性状調査結果(平成21年春蚕期調査)